財形貯蓄は無理なく確実に目標額が貯金できる制度! そのメリットとデメリットとは?

財形貯蓄という言葉を聞いたことがあるという人は多いでしょう。しかし、何だか難しそうで、その内容を詳しく知っているという人は多くはないかもしれません。財形貯蓄は、少ないリスクで確実に財産を作っていくことができる制度です。給与振り込みを利用して、毎月の給料やボーナスから、無理のない範囲で確実に貯金をしていくことができます。そこで、財形貯蓄制度の仕組みやメリット・デメリットを踏まえ、どのような場合に利用するとよいのかについてお伝えします。iDeCo(イデコ)など、ほかの金融商品との違いを理解したうえで賢く利用し、少しずつ将来のための備えをはじめましょう。

まずは押さえておきたい財形貯蓄の仕組みと種類について

財形貯蓄に興味がある人は、まずは財形貯蓄の仕組みについて理解しておきましょう。何だか難しそうな響きがあるかもしれませんが、仕組みそのものはそれほど複雑ではありません。

 財形貯蓄とは?

財形貯蓄とは、給与振り込みの際に自分が決めておいた金額を指定の口座に積み立てていくことができる制度です。勤務している会社から給与や賞与の振り込みがあるたびに、給与天引きを利用して別の口座へ送金し、貯金ができる仕組みといえます。会社を窓口とする月々の貯金ともいえ、月々1,000円から金額を指定できます。

 

会社が福利厚生の一環として行うものですので、財形貯蓄制度が導入されていることが前提です。自営業や個人での加入はできません。税金に対する優遇措置があるものや、一人につき1契約というルールが設けられているものがあります。財形貯蓄に対応している銀行はたくさんあり、自分が給与受け取り口座に指定している銀行とは別の銀行でも問題ありません。

 

財形とは、正式には「勤労者財産形成促進制度」という名前の国の制度で、国と銀行・会社(事業主)が連携して、従業員の財産形成を促す制度です。

 財形貯蓄は目的別に3種類ある

財形貯蓄には3種類があります。種類の違いは目的の違いで、住宅用の資金を作るのか、年金を増やしたいのか、この2つに限らず将来に備えておくのかにわかれます。

 

・財形住宅貯蓄

利用目的:住宅資金を作るため

利用条件:満55歳未満

積立期間:5年以上

税金:利子に対して非課税(貯蓄残高550万円まで(財形年金との合計))

契約数:一人1契約(財形年金貯蓄との併用は可能)

 

・財形年金貯蓄

利用目的:年金として受け取るため

利用条件:満55歳未満

積立期間:5年以上

据置期間:積み立て終了日より0.5~5年

受取期間:満60歳以上で5~20年以内

税金:利子に対して非課税(預貯金商品の場合、貯蓄残高550万円まで(財形住宅との合計))

契約数:一人1契約(財形住宅貯蓄との併用は可能)

 

・一般財形貯蓄

利用目的:旅行や結婚、転居に備えるなど自由

利用条件:特になし

積立期間:3年以上(1年以上で引き出し可)

税金:利子に対して20.315%の課税

契約数:複数契約可能

 

引き出しの条件については、銀行や勤務先の社内規定により条件が異なりますので、詳細は会社の関係部署・窓口にお問い合わせください。

知っておきたい基礎知識①財形貯蓄のメリットとおすすめの利用方法

財形貯蓄の3種類には、それぞれにメリットがあります。具体的には、どのようなメリットがあるのか見てみましょう。また、種類に関係なく、財形貯蓄に加入していることで得られるメリットについてもご紹介します。

 財形住宅貯蓄のメリット

財形住宅貯蓄の場合、利子にかかる税金の優遇制度があります。財形年金との合計金額が550万円まで利子は非課税とされ、税金がかかりません。それに加えて、一定の条件があるものの、住宅ローンを組むときに低金利で融資を受けることもできます。将来的に住宅の取得を考えている人や、住宅取得のための資金を準備しはじめたい人におすすめです。

財形年金貯蓄のメリット

財形年金貯蓄も財形住宅貯蓄と同じく、利子にかかる税金の優遇制度があります。条件も同じで、財形住宅との合計金額が550万円まで非課税とされ、利子に対して税金がかかりません。同じ財形年金でも、生命保険など保険商品の場合には非課税の上限が385万円となります。公的年金だけでは心配な人や受け取れる金額を上乗せしたい人におすすめです。

一般財形貯蓄のメリット

一般財形貯蓄の最も大きなメリットは、貯めたお金を自由に使えることです。積立期間も3年と比較的短く、開始から1年が過ぎれば、お金を自由に引き出すことも可能です。ほかの2つは目的が限られていますが、将来への備えや万が一のときのために貯金しておきたい人におすすめです。

 財形利用者に給付金を付与する会社もある

財形貯蓄制度を導入している会社の中には、従業員に対して給付金を付与する会社もあります。財形給付金制度や財形基金制度が導入されていることが前提となりますので、詳細は会社の関係部署・窓口にお問い合わせください。

 

知っておきたい基礎知識➁財形貯蓄のデメリットと解約について

財形貯蓄にはデメリットもあります。財形貯蓄全般と、3種類それぞれのデメリットについて見てみましょう。会社が窓口となる貯金ですので、退職や転職に伴う解約についても合わせてご紹介します。

 財形貯蓄のデメリット

財形貯蓄全般にいえるデメリットとして最も大きなものは、やはり金利が低いことでしょう。また、財形住宅と財形年金では合計550万円まで利子に対する税金が非課税ですが、この上限額を超えてしまうと利子全額に対して課税されることになります。お金を引き出す場合は、銀行と会社で取り決めた社内規定に従う必要があり、一度積み立てをはじめたら途中でほかの財形に切り替えることはできません。財形年金の場合、保険や投資信託を取り扱う商品では元本割れする可能性もあります。

 財形住宅貯蓄のデメリット

目的外の解約の場合には、税優遇が適用されません。住宅取得などに向けた資金作りが目的となっているため、目的以外の解約の場合には、利子に対する税金の優遇措置が適用されなくなるというデメリットがあります。具体的には、5年間遡って利息の20%が課税されます。なお、2037年12月31日までは復興特別所得税が加わり、税率は20.315%です。

 財形年金貯蓄のデメリット

財形住宅と同じように、老後のための資金作りが目的となっているため、目的以外の解約の場合には、利子に対する税金の優遇措置が適用されなくなるというデメリットがあります。税率の上乗せについても、同様です。60歳以降で受け取りはじめることができますが、積立が終了してから0.5~5年間の据置期間を経なければなりません。

一般財形貯蓄のデメリット

一般財形のデメリットは、利子に対する優遇措置がないことです。財形住宅や財形年金のように、利子に対する非課税枠がありません。しかし、この低金利では数円から数十円の差にしかならないことが多く、利子についてはデメリットとメリットが裏表の関係ともいえるでしょう。

 退職や転職の場合はどうなるの?

退職や転職は目的外の解約とみなされます。退職の場合には、目的外の解約の手続きを取る必要がありますが、転職の場合は条件が違います。転職先の会社にも財形貯蓄制度が導入されている場合に限り、2年以内であれば継続することが可能です。

知っておきたい基礎知識③:ほかの金融商品と比べて財形貯蓄のメリットは?

これまでは、財形貯蓄の概要とメリット・デメリットについて見てきました。そこで次に、ほかの金融商品と比較することで浮かび上がってくる財形貯蓄の特徴を理解しておきましょう。

 まとまった金額を準備するのに向いている

財形貯蓄の大きな特徴として、安全かつ確実にまとまった金額を作れることが挙げられます。給与天引きを利用できるため、手元に残るお金のなかからやりくりをする必要がなく、節約や貯金が苦手な人でも毎月確実に金額を増やしていくことができます。金利や株の動きを気にしながら自分で運用する必要がない、ローリスク・ローリターン型の金融商品といえます。

 大きく増やしたいなら別の金融商品も検討を

自分のお金だから自分で積極的に運用して、得られる利息よりももっと増やしたいという人には、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や、つみ立てNISAが向いています。毎月一定額を積み立てていくことは財形貯蓄と同じですが、自ら運用することにより財形貯蓄よりも大きな運用益を得ることも可能です。その一方で元本割れをする危険性もある、ハイリスク・ハイリターン型の金融商品といえます。

具体的な違いとしては、iDeCoでは、積立金がすべて所得控除の対象になる、運用益がすべて非課税になる、60歳以降で受け取る際にも控除の対象になるなどの違いがあります。つみ立てNISAでは、20年間運用益が非課税になる、利用年齢の上限がない、いつでも引き出せるなどの違いがあることを理解しておきましょう。

財形貯蓄を上手に利用して確実に目標額を貯めよう! 

毎月の給料のなかから少しずつコツコツと貯めていくことで、気がついたら大きな金額になっていたということが財形貯蓄の場合にはよくあります。月1万円なら3年間で36万円に、5年間なら60万円、10年続ければ120万円になります。若いときからはじめれば、少ない負担で大きく育てていくことも可能です。給与振り込みのときに自動的にお金を貯金に回してくれるため、黙っていて金額が増えるのが財形貯蓄の魅力です。上手に利用して目標額を貯め、自分の財産を作りましょう!