看護師離職率が高い理由とは!新人の3年以内離職の実態や長く働ける職場選びの基準を解説

看護師の離職率が高いと言われる理由に、不安や疑問を感じていませんか? 「やっぱり看護師って辞めやすいのかな」「働き続けられる職場の見極め方が知りたい」など、働き方に悩む声は少なくありません。
とくに新人や若手の離職率が注目される中で、今の職場でこのまま続けてよいのかという不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
こんな疑問を感じていませんか?
- 看護師の離職率って本当に高いの?最新のデータは?
- なぜ離職率が高くなりやすいの?どんな原因がある?
- 辞めやすい病院・職場にはどんな特徴があるの?
- 長く働ける職場はどう見抜けばいい?
- 転職する際に見るべきポイントは?
この記事では、看護師の離職率の実態や年代・病院規模別の傾向を整理したうえで、 離職率が高くなる背景や病院選びのチェックポイント、長く安心して働ける職場を見極める基準までをわかりやすく解説します。
看護師の離職率は?1年・3年以内離職や病院規模別の違いを解説
看護師の離職率は最新の調査で11.8%となっており、一見すると特別高い数字ではありませんが、若手の離職や病院ごとのばらつきが大きいため、辞めやすい職業という印象につながりやすい状況です。
離職率は年数、病院の規模、運営主体によって大きく変わるため、平均だけで判断すると実際の働き方を正しく捉えられないことがあります。
ここでは、看護師離職率の基本データや3年以内離職の傾向、病院規模による違いをわかりやすく整理します。
看護師全体の離職率の平均は11.8%
看護師の離職率は平均11.8%で、ほぼ全産業と同じくらいの水準です。
厚生労働省と日本看護協会の調査では、正規雇用の看護職員は毎年11%前後で推移し、新卒1年以内の離職率も8%台で安定しています。このため、忙しさや人手不足のイメージほど「突出して高い」数字ではありません。
ただし、離職につながる理由には業務負担や働き方の違いなど複数の要因が関係しており、職場ごとの差が数字に表れやすい特徴があります。
平均11.8%という数字を知っておくことで、今の職場の状況を落ち着いて比べやすくなります。
新人看護師の3年以内の離職率
新人看護師の3年以内離職率は全体平均より高く、辞めやすさが集中する時期です。
日本看護協会の調査では、3年以内離職率が16%前後になる年もあり、医療・福祉全体でも3年以内離職率が20%以上になるケースがあります。
夜勤の負担、急性期のスピード感、指導者との相性、環境の厳しさなど、経験の浅い時期に感じやすい壁が重なり、離職を考えやすくなる傾向があります。
こうした特徴を理解しておくと、職場の定着力や教育体制を判断する際に迷いにくくなります。
病院規模別や設置主体別で変わる離職率
看護師の離職率は、働く病院の“規模”と“設置主体”によって大きく変わります。まず病院規模では、小規模病院は離職率が高く、大規模病院ほど低い傾向があります。いっぽう設置主体では、公立病院が低く、医療法人が高めです。これらの違いを理解すると、自分の職場の特徴をより客観的に捉えやすくなります。
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1病院規模別に見る看護師の離職率
小規模病院は人手が集まりにくく、夜勤や業務負担が重くなりやすいため離職率が高めになります。逆に大規模病院は人員配置が安定し、教育体制も整えやすいため離職率が低い傾向があります。
病床規模 正規雇用離職率 新卒離職率 99床以下 12.6% 12.1% 100〜199床 12.6% 12.1% 200〜299床 12.2% 9.4% 300〜399床 11.5% 8.8% 400〜499床 10.4% 8.2% 500床以上 10.4% 8.0% 規模による違いを把握することで、自分の職場がどのレベルの離職率にあるのか比較しやすくなります。
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2設置主体別に見る看護師の離職率
運営主体によって働きやすさや勤務体制が変わり、それが離職率に反映されています。公立病院は人員体制が安定しやすい一方、医療法人は夜勤・業務量が増えやすく離職率が高くなる傾向があります。
設置主体 正規雇用離職率 新卒離職率 公立 7.7% 7.7% 国立 10.2% 7.0% 日本赤十字社 9.4% 5.7% 医療法人 14.4% 10.8% 社会福祉法人 12.0% 12.1% 公益社団・財団法人 13.4% 10.3% 設置主体の違いを知ることで、職場選びや現在の環境評価に役立てることができます。
看護師の離職率が高いと言われる主な理由
看護師の離職率が高いと言われる理由には、業務量の多さ・夜勤の負担・人間関係の難しさ・教育体制の不足など複数の要因が重なりやすい構造があります。
数字では見えにくい働き方の実態を整理することで、自分の置かれている環境が離職率の高い職場に当てはまるかどうかを判断しやすくなります。
看護師が辞めやすくなる典型的な理由を4つの観点で詳しく解説します。
業務量や人員配置の偏りによる過重負担
看護師が離職を考えやすくなる大きな理由は、業務量の過多と人員配置の偏りによる負担が極端に大きくなりやすいことです。
業務量が多い病棟では、1人あたりの受け持ち患者数が増え、急変対応・処置・記録・家族対応など時間のかかる業務が重なり、勤務時間内に仕事を終えられなくなりやすい状況が生まれます。
特に人手不足の病棟では応援が入らず残業が恒常化し、休日の呼び出しや急なシフト変更が続いて心身が消耗しやすくなります。
緊張状態の長時間化が起こる外来・救急兼務では負担がさらに大きくなりやすく、離職につながりやすい環境が形成されます。
人員配置の偏りは看護師1人ひとりの負担を増大させ、離職につながる主要因となります。
夜勤や交代制勤務による身体的疲労の蓄積
看護師の離職率を押し上げるもう1つの理由は、夜勤や交代制勤務による強い身体的負担です。
- 生活リズムが乱れやすく睡眠の質が低下する
- 少人数で多くの業務をこなすため緊張状態が続く
- 月7〜8回以上の夜勤があると慢性的な疲労が蓄積しやすい
急性期病棟では急変対応や看取りが重なることも多く、気持ちの切り替えが追いつかないまま次の勤務を迎えるケースが続きます。
交代制勤務は勤務形態そのものに身体的負担が伴うため、疲労の蓄積により集中力が低下する状態が続くと健康面の不安から離職を検討する状況が生まれやすくなります。
人間関係のストレスやコミュニケーション不全
看護師の離職理由で頻繁に挙がるのが、人間関係によるストレスです。
看護はチームで動く場面が多く、連携がうまくいかない環境では小さな摩擦がストレスになりやすくなります。
価値観の違い、先輩の指導方法との相性、業務量の偏りが引き起こす不満など複数の要因が積み重なると、職場の雰囲気が悪化しやすくなります。
特に急性期病棟ではミス防止のための厳しい声かけや緊張感が続き、心理的負荷の増大が離職につながるケースがあります。
中途入職者が馴染みにくい、相談しにくい雰囲気の職場では不安が解消できず、離職を考えやすくなります。
教育不足やフォロー体制の弱さによる離職増加
教育やフォロー体制が十分に整っていない病院では、看護師が不安を抱えたまま業務を続けることになり、離職につながりやすくなるリスクが高まります。
- プリセプター制度が形だけで、指導が安定しない
- 教育担当者の負担が大きく、継続的なサポートが不足する
- 質問しづらい雰囲気で成長が止まり、自信喪失につながる
業務の優先順位やコツが身につかないまま時間だけが過ぎていく状況では、精神的負担が増大し、仕事への自信を失うきっかけとなります。
教育体制が整った職場では安心して学びながら成長できるため、長期定着を左右する重要な視点になります。
離職率が高い病院の特徴と見抜き方
看護師の離職率は病院ごとに大きく異なり、離職率が高い病院には共通する特徴が存在します。求人票や面接で判断できるポイントも多いため、事前に知っておくことで働き始めてからのミスマッチを防ぐことができます。
ここでは、離職率が高い職場で起こりやすい環境面の特徴と、求人票・面接の両方から見抜くための判断軸を整理します。事前に見抜ける力を持つことで、後悔の少ない転職が可能になります。
離職率が高い病院に共通する環境の特徴
離職率が高い病院に共通する大きな特徴は、人員が安定せず業務量が偏りやすい環境になっている点です。
人手不足の病棟では1人あたりの受け持ち患者数が多くなるだけでなく、休憩が取りにくい勤務になりやすく、夜勤明けに日勤が続くなど無理のある勤務形態が積み重なりやすくなります。また、急性期病棟で業務負担が大きいにもかかわらず支援スタッフが少ない職場や、委員会・勉強会などの業務外負担が多い病院では疲労が蓄積しやすくなります。
さらに、記録の電子化が進んでいない病院では手書き作業による事務負担が重く、時間外労働が増えるケースもあります。職員が定着しない病院では新人や中途入職者が頻繁に入れ替わり、教育に割ける時間が不足することでミスが起こりやすくなり、その緊張感が離職につながりやすくなります。
求人票で見抜ける離職率が高い病院のサイン
離職率が高い病院は、求人票の内容から一定の特徴を読み取ることができます。
- 「随時募集」「複数名募集」「大量募集」などが常に掲載されている
- 夜勤回数が多すぎる、または手当で基本給の低さを補っている
- 残業時間の記載が曖昧、もしくは想定年収の幅が極端に広い
- 「教育体制あり」などの記載が抽象的で内容が具体的でない
求人票で読み取れる情報は限られていますが、曖昧な記載や人手不足を示す表現が続く求人は要注意です。具体性のないアピール文が並ぶ場合、実態が伴っていない恐れがあります。
面接や見学で確認すべき離職率に関係する重要ポイント
面接や病院見学では、求人票だけではわからない「離職率の高さを示すサイン」を直接確認できます。
- 職員の表情・ナースステーションの雰囲気に余裕があるか
- 教育体制・人員配置について質問した際の回答が具体的か
- 「夜勤体制」「受け持ち人数」「残業時間」の説明が明確か
- 新人・中途入職者がどのくらい在籍しているか
とくに、病棟見学で職員同士の声かけが少ない場合や、記録が滞っている様子が見られる場合は負担が集中している可能性があります。また、担当者が教育体制や人員配置について曖昧な回答しかできない場合は、内部の整備が追いついていない可能性があります。
面接・見学で得られる情報は、離職リスクを事前に察知するための重要な材料です。具体的な質問を行い、環境が自分に合うかどうかを慎重に判断することが、転職の成功につながります。
看護師が長く働ける病院・職場選びのポイント
離職率の高さに影響する要因を理解したうえで、長く働ける病院の特徴を押さえることは重要です。看護師として安心して働き続けるためには、人員配置、教育体制、キャリア支援など複数の要素が適切に機能しているかどうかを見極める必要があります。
働きやすさにつながる重要な3つの視点をもとに、定着率が高い職場の特徴を具体的に解説します。
適切な人員配置が行われていて業務量が適切
看護師が長く働ける職場には、業務量と人員配置のバランスが取れているという共通点があります。
人員配置が安定している病院では、1人あたりの受け持ち患者数が過度に増えず、日勤・夜勤どちらでも無理のない体制が整っています。看護師が休憩をしっかり取りやすい環境は勤務中の集中力を保ちやすく、長期的な健康維持にもつながります。
また、多職種との連携がスムーズな職場では、看護師だけが業務を抱え込む状況が生まれにくく、心身の負担が減りやすくなります。
業務量が適切に保たれている職場は残業が増えにくく、シフトの急変更も発生しにくいため、生活リズムを整えやすい特徴があります。急性期のような業務密度の高い現場でも、支援スタッフが整っていれば看護師の負担を軽減できます。
教育体制やフォローアップが整っている
看護師が安心して働き続けられる職場には、教育体制とフォローアップの仕組みが整っているという特徴があります。
- プリセプター制度が実際に機能している
- 中途入職者向けの教育プログラムが整備されている
- 定期的な振り返り面談や相談窓口がある
プリセプター制度や中途向けの教育プログラムが機能している職場では、経験年数に関わらず安心して業務に慣れることができます。業務内容の優先順位や判断ポイントを丁寧に共有してもらえる環境は不安を減らし、成長実感を得やすくなります。
教育担当者が複数名でサポートする体制がある場合、指導負担の偏りを防ぎ、教える側・学ぶ側どちらも無理なく学び続けられます。
キャリア支援やメンタルサポートが機能している
長く働ける病院には、キャリア支援の仕組みとメンタルサポート体制が整っているという大きな特徴があります。
| 項目 | 内容 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| キャリア支援 | 研修・資格取得支援、明確な役職登用基準 | キャリアプランが明確になり意欲向上につながる |
| 業務量調整 | 管理者が業務量を把握し必要に応じて調整する | 個々の働き方に配慮され定着しやすい |
| メンタルサポート | 相談窓口・カウンセリング体制、ハラスメント対策 | 心身の負担を早期に解消でき安心して働ける |
キャリア支援が整った職場では、研修や資格取得の支援が明確で、自分の強みを活かした働き方を選びやすくなります。また、管理者が職員の状況を把握して業務量の偏りを調整することで、無理のない働き方が可能になります。
メンタルサポートが機能している病院では、困りごとを抱えたまま働き続けるリスクを減らせるため、長期的に安心して働ける環境が整います。
離職率を正しく理解し自分に合う働き方を選ぼう
看護師の離職率は数字だけでは判断しきれず、年次・病院規模・設置主体の違いによって大きく変わるため、まずは正しいデータを踏まえて自分の環境を客観的に把握することが大切です。
離職率が高くなる理由や職場ごとの特徴を理解すれば、現在の環境が働きやすいのか改善が必要なのかを冷静に判断しやすくなります。
また、長く働ける職場には人員配置の安定、教育体制、キャリア支援といった共通点があるため、これらの視点を持つことで転職や職場選びの質が高まります。
自分の価値観と働き方に合う環境を選ぶ姿勢を持つことで、看護師として安心して働き続けられるキャリアを築けます。